商業登記規則等が改正され、商業・法人登記の取り扱いが大きく変わりました。
①印鑑提出任意化を踏まえた改正
②使用することのできる電子証明書の見直しについての改正
③オンラインによる印鑑の提出等及び電子証明書による証明の請求についての改正
④押印規定の見直しについての改正
⑤定款認証及び設立登記の同時申請の運用が開始
①印鑑提出任意化を踏まえた改正
(1)書面によって登記申請をする場合は、引き続き登記所届出印を、申請書・代理権限証書に押印しなければならない(印鑑の提出を要する)。
(2)登記所に印鑑を提出した者がいない会社の代表者が辞任する場合には、全ての代表者について、辞任したことを証する書面に押印した印鑑につき市区町村の作成した印鑑証明書を添付しなければならない。
(3)A法人の代表者がB法人である場合に、B法人の代表者XがA法人の職務執行者として印鑑の提出を行う際には、①XがB法人の代表者として印鑑の提出をしている場合には、当該印鑑を印鑑届書に押印する。②XがB法人の代表者として印鑑の提出をしていない場合には、Xが押印した印鑑につき市区町村の作成した印鑑証明書(作成後3ヶ月以内)の添付を要する。
なお、登記所の作成した法人の代表者の印鑑証明書の添付は不要となり、代わりに登記所の作成した法人の代表者の資格を証する書面の添付を要することとされた。
②使用することのできる電子証明書の見直しについての改正
(1)書面による申請の場合
改正前の取り扱いでは、申請書に添付すべき電磁的記録に記録された情報の作成者が印鑑を提出した者であるときは、当該電磁的記録に記録すべき電子証明書は、原則として、商業登記電子証明書に限られていた。
改正後は、その場合であっても、代理人の権限を証する情報(委任状情報)については「マイナンバー電子証明書」及び法務大臣の指定する電子証明書も使用できることとされ、委任状情報以外の添付書面に関する情報については、それに加えて法務大臣の指定する電子証明書も使用できることとなった。
(2)オンラインによる申請の場合
改正前の取り扱いでは、申請書情報及び添付書面情報に電子署名を講じた者が印鑑を提出した者であるときは、送信すべき電子証明書は、原則として、商業登記電子証明書に限られていた。
改正後は、その場合であっても、①本人申請にかかる申請書情報及び添付書面情報については「マイナンバー電子証明書」及び法務大臣の指定する電子証明書も使用できることとされ、②委任による代理人にかかる申請書情報及び委任状情報以外の添付書面情報については、それに加えて法務大臣の指定する電子証明書も使用できることとなった。
使用できる電子証明書は法務省のホームページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html#04)で確認できます。
(3)電子署名サービスによる電子署名がされた添付書面情報について
いわゆる認印で足りる添付書面に相当する情報については、電子署名サービスによって添付書面情報の作成者が書面の作成に関与していることを確認できれば、当該書面情報の作成者が電子署名を行ったと判断して差し支えないとされたもの考えられる。
役員等の本人確認証明書及び定款については、原本と相違ない旨の記載及び記名を行ったものをPDFデータ化し、電子署名サービスにより本人が関与していることを確認することができれば、添付書面情報として添付することができる。
③オンラインによる印鑑の提出等及び電子証明書による証明の請求についての改正
(1)オンライン印鑑提出等
オンラインによる登記の申請と同時にする場合に限り、オンラインによって印鑑の提出(改印)又は廃止の届出ができることとなった。
具体的な方法は法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00072.html)で確認できます。
(2)電子証明書オンライン請求
電子証明書オンライン請求は被証明者が印鑑を登記所に提出していない場合でも可能である。なお、書面により請求をするには従来どおり事前に印鑑の提出が必要。
具体的な方法は、法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00086.html)記載の内容に従って、管轄登記所に送信して行う。
④押印規定の見直しについての改正
・登記簿の附属書類の閲覧の申請書 ー 押印不要
・事業を廃止していない旨の届出 ー 押印不要
・再使用証明申出書 ー 押印不要
・定款、取締役会議事録(取締役の一致があったことを証する書面) ー 押印必要
・不正登記防止申出書及び取下書 ー 押印必要
・登記された事項につき無効の原因があったことを証する書面 ー 押印必要
・就任承諾書又は辞任を証する書面(商登規則61条4項又は8項に該当する) ー 押印必要
・就任承諾書又は辞任を証する書面(商登規則61条4項又は8項に該当しない) ー 押印不要
・株主リスト ー 押印不要
・資本金の額の計上に関する証明書 ー 押印不要
・添付書面の還付を請求する際に作成する謄本 ー 押印不要(原本と相違ない旨及び記名は必要)
・役員等の本人確認証明書 ー 押印不要(原本と相違ない旨及び記名は必要)
・その他、法令上押印又は印鑑証明書の添付を要しない書面 ー 押印不要
・訂正印 ー 訂正等をする書面の押印につき法令上の根拠がないものは押印不要
・申請書への契印 ー 押印必要
・その他の書面への契印 ー 当該書面の押印につき法令上の根拠がないものは押印不要
なお、押印規定の見直しにより押印不要となった書類であっても、電磁的記録によって作成する場合にはその作成者等の電子署名を講じ、電子証明書を送信する必要がある。
⑤定款認証及び設立登記の同時申請の運用が開始
株式会社の設立登記の申請のうち、定款認証の嘱託及び設立登記の申請がオンラインで同時にされているものを対象とし、公証役場から認証された定款が法務局へ送信されたことをもって、登記が完了する。
定款以外の添付書面は書面によって提出することもできるが、その場合は、24時間以内処理の対象とならない。24時間処理の対象となるのは、設立時役員等が5人以内であり、添付書面情報がすべて電磁的記録で作成され、収入印紙でなく電子納付が利用されている場合である。
同時申請は、登記・供託オンライン申請システム及び法人設立ワンストップサービスから行うことができる。
・申請された日の当日中に定款が認証されなかった場合には、設立登記の申請は却下される。
・設立登記の申請日の翌日以降に出資の履行を行い、当該払込みがあったことを証する書面が添付された場合は、設立登記の申請は却下される。